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各種契約の注意点

契約の注意事項一覧

注意事項内容

売買契約

外国企業からものを買いたい、または外国企業にものを売りたいというときに必要となってくる契約が、売買契約です。売買を継続的に行いたい場合には、最初に継続的取引契約が交わされる場合もありますが、この売買契約の派生型です。

単純な契約だと思われるかもしれませんが、何も知らないまま日本の商慣習とは全く異なる慣習を持つ外国企業と取引をしようとすると、思わぬ制度や慣習に直面し、契約書の作成が思うように進まないことも多々あります。

特に、相手方は海の向こうの良く知らない企業であるならば、代金の決済方法、物品の受け渡し方法、危険負担の定め等に細心の注意を払わなければいけませんが、多くの場合、既存の日本語の契約文書をそのまま英訳するだけでは、安心できる契約書にはなりません。

また、高価品の売買の場合は、エスクローサービスという仲介制度を利用する場合もありますが、そのような場合には、相手方との売買契約に加え、エスクローエージェントとの間にも英文の契約を交わさなければならないことになりますので、その契約にも注意を払わないといけません。

単純だと思っていた英文の売買契約作成に少しでも悩むところがあるのであれば、法律家にアドバイスをもらって解決することをお勧めします。

 

共同開発契約

複数の当事者が、それぞれの有する知識、技術、情報、人的組織、物的組織、資金等を集約して、一つの成果を開発することを目的として締結される契約が共同開発契約です。海外企業の有する技術と自らが有する独自の技術を融合させ、開発にかかるコストを低減させつつ、より良い技術を開発するために、日本企業にとっては大切な契約の一つです。

この契約締結における留意点は、秘密情報の保護と、開発成果の帰属・利用方法、開発作業・費用の分担です。

特に共同開発契約においては、自社の最先端の技術・ノウハウを相手方に開示する場合が多いでしょうから、その取り扱いについて厳格に定め、相手方からの情報の漏洩がないように契約で秘密保持義務を定め、相手方を縛る必要があります。秘密保持に関連して、第三者との同種の共同開発・研究を禁止するという規定を設けることもしばしばあります。

また、良い開発成果が得られた場合に、その開発成果の帰属や利用について相手方と重大なトラブルにならないように、あらかじめ契約で規定しておく必要があります。

 

販売店契約・販売代理店契約

とあるメーカーが、海外でも自社の製品を継続的に販売したいが、海外には自社の拠点がない、しかし、自社製品の販売を取扱ってくれるという会社が海外に存在する場合には、その会社との間で、販売店契約または販売代理店契約を締結する必要があります。なお、販売店契約と販売代理店契約と混同して使用しているケースがしばしばみられますが、一般的に両者は次のような違いがあります。

販売店契約(Distributorship Agreement)
メーカーから製品を販売店(契約の相手方)に販売し、販売店が自己の利益をプラスしてユーザーに販売する場合をいいます。この場合には、メーカーと販売店、販売店とユーザー、それぞれに売買契約が存在します。この場合、ユーザーに対する売掛債権の回収のリスクは、販売店が負うことになります。

販売代理店契約(Agency Agreement)
メーカーとユーザーとの間で直接売買契約を締結し、ユーザーを探してきてくれた販売代理店(契約の相手方)にメーカーが手数料・コミッションを支払う場合をいいます。この場合は、販売代理店は営業活動をするのみで、売買契約自体はメーカーとユーザーとの間で直接なされることになります。この場合、ユーザーに対する売掛債権の回収のリスクは、メーカーが負うことになります。

この様な違いをふまえ、適切な契約形態を選ぶ必要があります。さらに、特定地域における独占的な販売権(販売代理店契約の場合には販売代理権)を与えるのかどうか、与える場合には、独占権を与える地域をどこまで限定するか、または最低購入量(販売代理店の場合には最低販売量)の義務を設けるかどうかといった販売店契約(販売代理店契約)特有の検討すべき事項が多々ありますし、ユーザーからのクレームをどちらがどう処理するのかを定めることも重要になってきます。

 

秘密保持契約

ある企業と共同で事業を行おうと検討している場合や、ある企業からノウハウのライセンスを受けようとしていることを検討している場合に、いきなり共同事業契約やライセンス契約を結ぶのではなく、まずは相手企業から相手企業所有の秘密情報やノウハウの開示を受け、他方の企業において開示された秘密情報等の内容やその有用性を検討する作業が行われる場合が多いです。この秘密情報等の開示の際に締結される契約が、秘密保持契約です。英文の頭文字をとってNDAと呼ばれることの多い契約です。

特に自社が秘密情報等を開示する側であれば、秘密保持契約の各条項の内容を詳細かつ慎重に検討することが必須となってきます。開示した秘密情報等の取扱いに関する厳格な規定、秘密情報が漏洩した場合の救済手段の規定(差止請求、損害賠償)、違約金特約、契約終了後の秘密情報の取扱、秘密保持期間等、注意すべき項目は多々あります。
他方で、相手方の秘密情報等の開示を受ける側で契約をするのであれば、自社の体制を考慮し、あまりに厳しい要求が相手方からあれば、その要求を緩和すべく修正案を相手方に提示すべきですし、秘密情報が漏洩した場合の損害賠償の範囲についても、可能な限り契約で限定しておくことが大切になってきます。
外国企業が要求してくる秘密保持契約の内容は、日本国内で交わされる秘密保持契約よりもはるかに詳細な事項まで規定している場合が多いですので、上記の留意事項を念頭に置きつつ、正確に契約内容を理解し、正確な英文での修正案を示すことが重要です。
この秘密保持契約は、最初で述べたような事例に限らず、様々な場面で締結されることがありますので(例えば企業買収を検討しているときに、買収対象企業の企業情報の開示を受ける場合など。)、その場面に応じた秘密保持契約を作成することが重要です。

 

雇用契約

日本の企業が、雇用契約を英文で作成する必要に迫られるのは、大きく分けて次の二つの場合だといえます。まず、一つは、日本企業が日本において外国人労働者を雇用するためにその外国人との間で雇用契約を締結する場合、もう一つは、日本企業の海外の子会社が現地人を雇用するために現地人との間で雇用契約を締結する場合があります。

1つ目の場合は、既存の雇用契約を翻訳会社に出して英訳してもらえば、それで十分というわけではありません。法律的に正しい英語が使われているかをチェックしなければいけないことは言うまでもなく、場合によっては、その外国人の特殊事情(宗教、在留資格、語学力等)に応じて、既存の契約条項を変更しなくてはなりません。その変更後の契約条項が労働法(場合によっては入管法)に適合しているものとなっているか否かは、法律家に検討してもらうことが望ましいといえます。

2つ目の場合は、既存の雇用契約をそのまま英訳して用いるというわけにはいきません。当然のことながら、現地の労働法等の規制法規を検討した上で、雇用契約を作成しなければいけません。現地の弁護士等に作成を依頼することがもっとも理想的ですが、それが困難な場合は、日本の法律家に依頼して、現地の法規制などを調査してもらった上で、契約書を作成してもらうといったことが必要になってきます。

 

製造委託契約

メーカーなどが、自社の製品の全部または一部の製造を、海外の技術力のある工場等に委託して行おうとする場合に必要となるのが、製造委託契約です。

製造委託契約には、委託者が受託者に原材料等を無償で提供し純粋に加工賃のみを支払う形態、受託者に原材料等を調達させ製造させた製品を委託者が購入するという形態などがあり、それぞれの形態に応じて、適切な契約条項を定める必要があります。

特に委託者の立場に立つ場合には、受託者の製造技術を保証させる条項を設けたり、受託者に製造物責任保険の加入を義務付けたりする等、受託者の製造技術に対する手当てを契約書内であらかじめ行う必要があります。

また、委託者が受託者に対して委託者の秘密情報を開示して製造委託を行う場合には、受託者の秘密保持義務、類似製品の製造・販売制限義務などを契約に設け、委託者の秘密情報が流出してしまわないように細心の注意を払う必要があります。

海外企業との間で製造委託契約を締結する場合には、以上のような点を英文で正確に規定することと同時に、現地の法令にも配慮して、契約書を作成する必要があります。

 

予備的合意書

海外の企業との間で、合弁事業や共同事業など比較的規模の大きな契約を交わす場合には、契約を締結するまで、何度も事前交渉が行われ、様々なことが段階的に合意されていくのが通常です。このような場合、最終的には何十頁、何百頁にもおよぶ契約書が作成されますが、それ以前の交渉段階で、ある程度まとまった合意ができた段階で、当事者間での合意事項を確認するために、Letter of Intent(LOI)やMemorandum of Understanding(MOU)といった予備的合意書が交わされる場合が多いです。

日本ではあまりなじみのない予備的合意書ですが、最終的に完成する契約に比肩するほど重要なものであり、その内容は慎重に検討されなくてはなりません。この予備的合意は、当事者間の最終的な合意ではないから、法的拘束力が一切発生しないというわけではなく、当該合意書の内容、作成経緯、契約の交渉状況などから、一定の法的拘束力が認められるとされる場合も多いからです。
したがって、予備的合意書を作成・検討する場合には、最終契約に臨む場合と同等の注意を払い、自社に不利な事項の合意で、法的拘束力を持たせたくないような場合には、法的拘束力を排除するような文言、表現にして、法的拘束力が認められる可能性をできるだけ最小限に抑えるべきです。

重大な契約交渉において予備的合意書を作成する場合には、社内でのチェックのみならず、法律家・専門家の目で内容の検討をしてもらい、会社にとってリスクとなりうる合意書になっていないかを確認してもらうことをお勧めします。

 

ライセンス契約

相手方が保有する特許権、商標、著作権、またはノウハウなどの知的財産権を、自社の製品に導入したい、または自社の保有する知的財産権の実施を海外の会社に許諾し、ロイヤルティ収入を得たい、といった場合に必要となってくる契約が、ライセンス契約です。

相手が国内企業であるか海外企業かを問わず、ライセンス契約においては、実施許諾の範囲、独占的ライセンスか非独占のライセンスか、サブライセンスの可否、ロイヤルティ(実施料)、保証の程度(ライセンス対象となる特許には無効原因がないという保証、ライセンスの対象となる知的財産権は第三者の権利を侵害していない保証等)、改良技術の取扱い、第三者による侵害の対処、契約期間等の点を、慎重に検討する必要があります。

加えて、海外企業とのライセンス契約においては、そのライセンスを実施する国における独占禁止法の検討が不可欠となってきます。例えば、米国であればシャーマン法及び反トラスト法、EUであれば技術移転契約における一括除外適用規則(EC規則)に抵触しないように契約条項を定める必要があります。自社に有利な条件が独禁法に抵触しないように注意する一方で、相手方から一方的に不利な条件を押し付けられそうな場合には、独禁法抵触を理由に相手方の要求を拒否することができます。

 

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